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新潟県議会は20日、総額約149億円の補正予算案を全会一致で可決した。この中に、原子力災害が起きた場合の避難道路を雪から守るための費用として、約16億円が盛り込まれた。対象は柏崎刈羽原発から30キロ圏内にある市町村である。冬の降雪時に避難が必要になっても、道路が使えなければ計画は動かない。そこで、自治体の除雪能力と、積もった雪を運び出す排雪の体制を底上げする狙いがある。通常の道路維持とは別枠で、避難計画と雪害対策を一つの予算で結びつけた点が特徴だ。

引用元: 新潟県、原発30キロ圏内の避難道路の除雪・排雪に約16億円を計上(TeNY NEWS NNN)

分析・見解

避難計画の弱点は、道路に積もる雪だった

原発事故に備える避難計画は、これまで多くの場合、晴れた日の道路を前提に組み立てられてきた。ところが柏崎刈羽原発の周辺は、国内でも有数の豪雪地帯である。大雪の日には、除雪が追いつかず、車が一台立ち往生しただけで幹線が止まる。2020年12月の関越道では約2,100台が長時間動けなくなり、2021年1月の福井県でも国道8号で大規模な滞留が起きた。こうした事例は、雪が避難の最大の障害になり得ることを示している。今回の予算は、その穴を正面から埋めようとするものだ。

16億円は除雪費ではなく、備えを買う保険料に近い

通常の除雪費は、降った雪の量に応じて毎年変わる。一方、今回の補正は、いつ起きるか分からない事態のために、あらかじめ体制を整える性格が強い。たとえば除雪機械の増強、オペレーター(=除雪車の運転手)の確保、雪を置く場所の確保などが考えられる。使われなければ無駄に見えるが、必要な時に使えなければ取り返しがつかない。いわば、消防車を常に待機させておくのと同じ発想である。ここに予算を付けた意味は、金額以上に大きい。

本当の難所は人手と、雪の捨て場にある

機械を買えば解決する話ではない。新潟県内の除雪業界では、運転手の高齢化が進み、担い手が年々減っている。さらに、道路脇に雪を寄せるだけでは、避難に必要な幅は確保できない。雪を別の場所へ運ぶ排雪が不可欠になるが、ダンプと捨て場の手当てが要る。ここで見落とされやすいのは、避難の時間帯が通常の除雪とずれることだ。除雪は夜明け前に終えるのが普通だが、事故は時間を選ばない。夜間や休日にも動ける契約や人員の仕組みがなければ、予算は生きない。

他地域への波及と、残る制度上の課題

北海道の泊原発、石川県の志賀原発、福井県の若狭湾沿いの原発も、雪の影響を受ける立地である。新潟県の取り組みは、これらの地域が避難計画を見直す際の参考になるはずだ。ただし、課題も残る。市町村ごとに除雪能力の差が大きく、県境をまたぐ避難では、隣県の道路状況まで含めた連携が必要になる。予算が付いたことは出発点にすぎず、実際に動く訓練を重ねられるかが問われる。

ビジネスへの影響

除雪・排雪事業者にとっての新しい需要

避難道路の確保が公共の優先課題になれば、待機型の契約や、排雪の長期協定といった発注が増える可能性がある。これまでの除雪契約は、降雪の都度に出動する形が中心だった。今後は、非常時に確実に動けることを条件とした契約が出てくるだろう。事業者は、機械の台数や運転手の人数だけでなく、夜間や休日に何人集められるかを数字で示せるようにしておくと有利になる。自社の保有機械、人員、連絡体制を一度棚卸ししておきたい。

運転手の確保と機械の投資が経営判断の中心に

ただし、需要が増えても、担い手がいなければ受注できない。若手の採用や、他業種との人材の共有、遠隔操作や自動化の機械導入も検討に値する。投資額が大きいため、補助金や自治体との長期契約を組み合わせて回収の見通しを立てることが現実的だ。また、非常時の出動は通常より危険度が高い。作業中の事故や機械の損害に備え、保険の内容を見直しておくことも欠かせない。

沿線の企業と物流会社が備えること

除雪事業者以外にも影響はある。原発周辺に工場や倉庫を持つ企業は、避難時に従業員と車両が同時に動くことを想定した計画が必要だ。物流会社は、避難路が優先的に除雪される日と、通常の配送ルートが後回しになる日が重なる点を織り込み、運行計画に余裕を持たせたい。自社の事業継続計画に、雪と避難の組み合わせという視点を一行でも加えておくだけで、備えの質は大きく変わる。

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