ニュースの概要
青森市は、冬の除排雪に関する新しい契約の内容を事業者に説明した。大きな変更点は、道路の雪を寄せる除雪と、雪を運び出す排雪を別々に扱うことだ。市は、降雪後の対応を速くする狙いがあると説明している。一方、説明の場では事業者から不満の声が相次いだと伝えられた。待機にかかる費用や収入の見通しなど、現場の負担への懸念が背景にあるとみられる。豪雪地帯の都市では、除排雪は通勤、救急、物流を支える生活の基盤である。契約の形を変える今回の見直しは、対応の速さと担い手の経営の安定をどう両立させるかを問うものになっている。
引用元: 事業者から不満噴出 青森市除排雪 新契約を説明 除雪と排雪分け「迅速性」高める(ABA青森朝日放送)
分析・見解
除雪と排雪を分ける狙いは、最初の通行確保にある
除雪は、車が通れるように道路の雪を脇へ寄せる作業である。排雪は、寄せた雪をダンプトラックで運び出す作業である。これまでは両方をまとめて一つの契約で任せる形が一般的だった。青森市は新しい契約で、この二つを分けて扱う方針を説明した。狙いは、降雪直後の道路確保を最優先にして、対応の速さを高めることだ。
考え方としては筋が通っている。一括契約だと、事業者は排雪用のダンプや人員の手配も考えながら動くため、除雪の出動判断が遅れる余地が生まれる。役割を分ければ、除雪の担当は「まず道を空ける」ことだけに集中できる。
事業者の不満は、収入の安定が崩れる不安から生まれる
除雪は、雪が降るかどうかで稼働が決まる仕事である。夜中の出動に備えて、運転手と重機を常に待機させる必要がある。降らない冬は、機械の維持費や人件費だけが残る。これまで、その負担を排雪の仕事量が補ってきた面は大きい。
契約を分けると、この「穴埋め」が効きにくくなる。不満の中心は、待機に見合う単価が保証されるのか、排雪の仕事が誰にどう割り振られるのか、という点にあると考えられる。これは推測を含むが、他地域の除雪契約でも同じ論点が繰り返し出ている。
札幌市などの経験が示す、分離方式のつなぎ目の弱点
大都市では、除雪と排雪を別の作業として扱う運用が早くから根づいている。札幌市は、地区ごとに事業者へ任せる仕組みを整え、排雪は積雪の状況を見て実施する。ここから学べるのは、分けること自体より「つなぎ目」の設計が重要だという点だ。
除雪が先に雪を寄せても、排雪が遅れれば、路肩の雪山で道幅が狭まり、交差点の見通しも悪くなる。除雪の速さを上げても、排雪の発注判断が遅ければ、市民の体感は変わらない。二つの作業の間に生まれる待ち時間こそが、新方式の成否を左右する。
迅速性を成果に変えるには、測れる基準が欠かせない
速さを高めるなら、速さを測る物差しが必要になる。たとえば、積雪が何センチで出動するか、主要道路を何時間以内に通行可能にするか、といった基準だ。基準が曖昧だと、事業者は「どこまでが契約の範囲か」で迷い、市は「遅い」と評価しにくい。
最近は、重機にGPS(=位置情報の記録装置)を載せて走行の軌跡を残す自治体も増えている。作業の見える化は、事業者にとっても、実績を示して適正な支払いを求める根拠になる。不満をやわらげる鍵は、市が求める速さと、事業者が負う待機のリスクを、同じ数字の上で話し合えるようにすることだ。
ビジネスへの影響
除雪業者は待機費と稼働率を数字で示しておく
新契約の下では、除雪に近い役割を担う事業者が増える可能性がある。まず自社の費用を洗い出したい。重機の償却費、保険料、運転手の待機人件費、燃料費を、出動1回あたりの費用と、雪が降らない年にも残る固定費に分ける。この資料があれば、市との協議で単価や待機費の根拠を示せる。
また、排雪を別枠で受注できるかどうかで、冬の収支は大きく変わる。ダンプや積込機を持つ会社と組み、共同体(=複数社で一つの仕事を受ける形)をつくる選択も検討する価値がある。
建設・運送会社には冬の新しい受注の入口になる
排雪が独立した仕事になれば、除雪用の重機を持たない運送会社や建設会社にも、受注の機会が広がる可能性がある。ただし、採算を決めるのは雪捨て場までの距離とダンプの回転数である。夏場の工事が中心の会社は、冬の運転手の確保や、既存の工事との人員のやりくりも早めに考えておきたい。
市の発注方法や入札の条件は、今後の説明で具体化していくはずだ。条件が出そろった段階で、受けられる量と断る基準を社内で決めておくと、無理な契約を避けられる。
店舗や管理会社は敷地内の雪対策を早めに固める
市道の除雪が速くなっても、駐車場や敷地内の通路は、管理する側が自分で対応する必要がある。市の契約変更で事業者の余力が変われば、民間の除排雪の依頼が混み合うおそれもある。
店舗や不動産の管理会社は、シーズン前に民間の業者と契約を結び、出動の基準と連絡先を決めておくとよい。雪山を置く場所の確保や、排雪の依頼時期も事前に取り決めておくと、積雪が増えた後の混乱を減らせる。