ニュースの概要

北海道根室市が公式サイトで、冬季の除雪作業を担う「除雪参加者」の新規募集を発表した。根室市は「朝日にいちばん近い街」のキャッチフレーズで知られる道東の港町で、歩道や生活道路の除雪を専門業者だけでなく地域住民にも広く呼びかけている点が特徴だ。背景には、除雪オペレーターの高齢化や担い手不足という、北海道内の多くの自治体が抱える構造的な課題がある。公的な除雪体制の維持が年々難しくなるなか、住民参加という形で冬の生活インフラを支えようとする動きは、全国の雪国自治体にとっても示唆に富む事例といえる。

引用元: 除雪参加者新規募集について/朝日にいちばん近い街(city.nemuro.hokkaido.jp)

分析・見解

除雪参加者募集が映す「人手不足」は建設業全体の縮図

根室市が住民向けに除雪参加者を募集した背景には、除雪オペレーター(=除雪車を操作する作業員)の高齢化と担い手不足という、道内の多くの自治体に共通する構造的な問題がある。除雪作業は冬季の数カ月間に業務が集中する季節労働であり、若い世代にとって収入の安定性に欠ける仕事として敬遠されやすい。道内の除雪関連調査でも、オペレーターの平均年齢が60代に差しかかる自治体は珍しくなく、建設業就業者全体の高齢化がそのまま冬の暮らしを支える現場に直結している。根室市のように人口減少が進む地域では委託先の建設業者自体の体力も年々細っており、今回の募集は単発の人員補充ではなく、除雪体制そのものの持続可能性を問う取り組みだと捉えるべきだろう。

「自治体が除雪する」から「住民も除雪を担う」への発想転換

注目すべきは、今回の募集が専門業者だけでなく地域住民を対象にしている点だ。これは除雪行政における「公助」から「共助」への発想転換を意味する。札幌市のスノーバスターズのように、高齢者など要支援世帯の玄関先や歩道の除雪をボランティアが担う仕組みは道内各地で広がりを見せており、根室市の動きもこの流れに連なる。幹線道路や主要路線は委託業者による機械除雪に任せ、生活道路や個人宅周りといった「最後の数十メートル」を住民の手に委ねるという役割分担は、限られた予算と人員で冬の暮らしを支えるための現実的な選択肢になりつつある。

機械化・DXが進んでも代替できない「ラストワンマイル」

除雪業界ではGPSを使った除雪車の運転支援や、積雪・気象データをもとに出動判断を最適化する仕組みなど、デジタル技術(=DX)の導入が進んでいる。これらは幹線道路の除雪効率を大きく高める一方で、幅員の狭い路地や歩道、個人宅の玄関先までは手が届きにくい。つまり機械化が進むほど、浮いた人員や予算を「ラストワンマイル」の人力除雪に再配分する必要性が高まるという逆説が生まれる。根室市の取り組みは、この再配分の受け皿を住民参加という形であらかじめ確保しようとする試みとも読める。

ボランティア任せの安全管理は手薄になりやすい

一方で見落とされがちなのが、住民が除雪作業に参加する際の安全面の手当てである。転倒や除雪機による怪我、屋根からの落雪事故など、プロの除雪事業者であれば労災や専用保険でカバーされるリスクが、ボランティア参加の枠組みでは曖昧なまま残されやすい。自治体がボランティア保険への加入を促すケースは増えているものの、補償範囲や金額は自治体ごとにばらつきが大きい。担い手不足の解消を急ぐあまり、安全管理の設計が後回しになっていないか、制度の中身まで点検する必要がある。

ビジネスへの影響

除雪事業者は「元請け」から「人材育成・機材供給」へ軸足を広げられる

住民参加型の除雪体制は、既存の除雪事業者にとって仕事を奪われる話ではなく、新しい収益源に転じ得る。除雪機の扱い方や安全な作業手順を住民に教える講習の受託、小型除雪機のレンタルや保守、自治体向けの運営コンサルティングなど、施工そのものだけでなく「人材育成・機材供給」の領域に事業を広げる余地がある。豪雪地帯以外でも冬季の人手不足に悩む自治体は多く、根室市のような事例はモデルケースとして他地域へ横展開しやすい。

保険会社には住民参加型除雪に特化した商品開発の好機がある

住民ボランティアによる除雪作業中の事故リスクをどうカバーするかは、自治体にとって頭の痛い課題であり、損害保険会社や共済にとっては具体的なニーズが見えている市場でもある。既存のボランティア保険を除雪作業向けにカスタマイズし、除雪機の操作ミスや落雪事故まで補償範囲に含めた短期・低価格の商品を自治体向けパッケージとして提案できれば、先行者の優位を取りやすい分野だ。

小型・軽量な除雪機メーカーには追い風が吹く

高齢者や除雪作業に不慣れな住民でも安全に扱える、軽量で操作が簡単な電動除雪機や小型除雪機への需要は今後さらに伸びると見込まれる。自治体が住民向けに除雪機の貸与や購入補助を行う動きも広がっており、機械メーカーにとっては自治体との連携を通じた新しい販路開拓が現実的な選択肢になる。

関連記事